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宇宙に近づいて空の放射線を見張る




保田 浩志(放射線医学総合研究所)

ふうぅ。観測機材が置いてある1号庁舎2階へ登る階段の途中、息苦しくなって立ち止まる。富士山頂の大気圧は海抜ゼロメートルの平地に比べて65%ほど、普段より3分の1空気が薄くなるだけでこんなに動けなくなるものか。自然の微妙なバランスのなかで人が生きていることを改めて実感する。

そんなしんどさはあるものの、日本一の高さを誇る富士山頂は、宇宙から飛来する放射線、いわゆる宇宙線による被ばくを監視するには絶好の場所だ。宇宙線の量は標高が上がるほど増える。ジェット機が飛行する高度では地上の百倍近くになる。航空機が仕事場の乗務員の人たちはそれだけ多くの宇宙線を浴びることになる。欧州に続き、日本でも2007年度から航空機乗務員の被ばく管理が始まった。筆者ら(放射線医学総合研究所)は、放射線防護の専門家という立場から、その管理作業を支援している。大きな任務は乗務員の被ばく線量を計算、検証することだ。

太陽活動は約11年の周期で盛衰を繰り返す。その周期どおり緩やかに変わる場合は、宇宙線による被ばく線量の評価は難しくない。厄介なのは突発的な変動が生じた場合、すなわち、"フレア"と呼ばれる太陽表面での巨大な爆発が起こった時だ。地上では分厚い大気が守ってくれるので被ばくを気にせずオーロラを楽しめるが、大気の薄い上空では気になるレベルの放射線を受ける可能性がある。フレアが起こった際、上空を飛行する人たちが受けた/受ける被ばく線量はいくらか、それが健康にもたらすリスクはどの程度か、という情報を、関心のある人たちに広くいち早く提供できるようにしたいと考えている。

それを可能にするための観測拠点の第一候補が、日本で一番宇宙に近い富士山頂に建つ、旧富士山測候所だ。まだゴールは遠く、文字通り険しい道のりだが、諦めず取り組んでまいりたい。皆さま、お力添えのほど、どうかよろしくお願いします。   


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写真 (左)富士山頂から眺めた雲海、(右)旧富士山測候所1号庁舎2階での宇宙線観測作業(2009年8月撮影)
 



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