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ススの長距離輸送ルート
兼保 直樹
黒色炭素(black carbon)粒子は、燃料などを燃やしたときに不完全燃焼で発生する黒い微小な粒子で、いわゆる“スス”のことです。そのサイズは、0.1〜1μm(マイクロメートル=百万分の1メートル)と小さいため、重力で地面に落ちることはほとんどありません。このため、発生してから長い時間大気中を漂い続け、長距離を輸送されます。
現在、CO2などの温室効果気体による地球温暖化が懸念されていますが、黒色炭素は太陽光(短波放射)を吸収する能力が高く、温室効果気体のように大気を暖める能力があります。
そのため、黒色炭素が地球規模でどの程度広がっているのか、どのような季節変化をするのか、どのようなルートを通って発生源地帯から太平洋上などのバックグラウンド地域に運ばれるのかを調べることが重要となり、富士山頂はそのような情報を得る上で絶好の場所です。
富士山頂の測定では、テープ状のフィルターに1cmの直径のスポットで空気を吸引して大気中の微粒子を集め、その光透過率の時間変化を測定することで黒色炭素濃度を1時間毎に自動測定しています。
図.富士山頂における黒色炭素粒子の観測
山谷風で午後遅くに濃度増加する状況が7/23 ,7/25, 7/26にみられる。台風5号通過時には非常に低濃度となるが、その後にいわゆる夏の天気となり、再び日中に濃度増加する状況が8/4, 8/5に再開している。(2007年夏季観測の中間結果)
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