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東京から見えなくなった富士山




兼保 直樹

大気中に漂う微粒子(エアロゾル)粒子のうち、太陽光の波長と大きさの近い0.1〜数μm(マイクロメートル=百万分の1メートル)のものは、光の進行方向を変え、前後左右に散らす性質があります。これを”散乱”と呼び、ホコリっぽい暗い部屋で懐中電灯を照らしたときに光の筋が見えるのはこの散乱のせいです。

遠くの景色が霞んで見えなくなるのも微粒子による散乱のせいです。浮世絵では江戸から富士山がよく見えていたことが伺われますが、大気汚染により空気中の微粒子の数が増えたため、現在では東京から富士山が見える日はめったになくなりました。

現在、CO2などの温室効果気体による地球温暖化が懸念されていますが、大気汚染などにより大気中の微粒子の数が増えることで散乱が増えると、後ろ向きの散乱により宇宙空間にはね返えされる太陽光の割合が増え、結果として地面に届く太陽光の量が減少し、温室効果とは逆に大気を冷やすことになります。そのため、気候変動の予測の精度を上げるためには、微粒子の量(数濃度)やサイズの観測とともに、微粒子による光散乱の程度の観測が必要となります。

富士山頂では、内部を黒く塗った筒の中程に装着した電球で筒内を横から照らし、筒の底の部分で光の強度を測ることによって、筒の中に導入された外気に含まれる粒子による全方位への散乱される光を積算して測定します(積分型ネフェロメータ, Radiance Research M903)。




図.富士山頂における微粒子の光散乱の観測

黒色炭素と同様に、山谷風で運ばれた物資により午後遅くに散乱係数が増加する状況が7/22 ,7/23, 7/24にみられる。台風5号通過時の散乱係数低下、その後、再び日中に散乱が増加する状況が8/4, 8/5に再開している点も黒色炭素と同様である。(2007年夏季観測の中間結果)

 

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