富士山測候所を活用する会
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夏期観測2022

Summer Observation
日中韓同時観測による長距離輸送されたPM2.5/PM1の化学組成解明
米持 真一(埼玉県環境科学国際センター)
中国における大気汚染には改善傾向が見られるが、長距離輸送による日本や韓国への影響を評価することは重要である。本研究では、東アジア地域のPM2.5の長距離輸送現象や夏季の関東地域の大気汚染への影響を明らかにするために、富士山頂において、連続自動採取装置を用いてPM2.5やPM1を採取し、主に金属元素成分に着目した成分分析を行う。
プロジェクト詳細
近年ではPM2.5を測定する機関は非常に多く、広域的な連携による大気汚染イベントの原因解明も繰り返し行われているが、これらは地上における観測データを用いている。自由対流圏に位置する富士山頂は地上の影響を受けにくく、長距離輸送された微小エアロゾルを捉えやすい。また、これまでの観測でPM2.5には登山者や強風による巻き上げにより、富士山の表面の火山性堆積物が多く含まれることが分かってきた。
試料採取プログラムとフィルターをセットする

PM1採取用分級機
PM1は、PM2.5中に含まれる自然起源粒子の影響を受けにくく、人為起源の粒子の評価に適している。本研究では韓国済州島や中国上海などでもPM1を同時に採取し、これらを比較することで、長距離輸送されたPM1の組成を明らかにする点が特徴である。
社会への還元

PM2.5は2013年1月の中国での高濃度現象発生を機に社会の関心が急速に高まった。本研究では、主として中国方面から長距離輸送されたPM2.5のうち人為起源の成分の指標とも言えるPM1の実試料を得ることができる。また、得られた試料の化学組成情報は大変貴重であり、これらを通じて、東アジア地域の粒子状物質汚染の現象解明に貢献することが可能である。

富士山測候所を利用する理由

自由対流圏に位置し、かつ独立峰である富士山は、長距離輸送された微小エアロゾルを調べるのに適している。また、測候所の電源を活用できるため、フィルター交換を自動的に行うシーケンシャルサンプラーが活用できる。富士山測候所は、これらの条件を満たしている。

PM2.5シーケンシャルサンプラー
プロフィール
氏名:米持 真一
所属:埼玉県環境科学国際センター
学術論文
[2022]
1) 米持真一:富士山頂におけるエアロゾルの観測研究―長距離輸送に着目して-, エアロゾル研究, 37(2), 87-95 (2022)
[2021]
1) 米持真一,堀井勇一,小西智也,Ki-Ho LEE,Yung-Ju KIM,畠山史郎,大河内博:富士山頂における昼夜別に採取したPM2.5中の無機元素による発生源解明,分析化学,70(6),363-371(2021).
2) Md Humayun Kabir, Md Harun Rashid, Qingyue Wang, Weiqian Wang, Senlin Lu and Shinichi Yonemochi: Determination of Heavy Metal Contamination and Pollution Indices of Roadside Dust in Dhaka City, Bangladesh, Processes, 9(10),1732 (2021). 3) Kai Xiao, Qingyue Wang, Yichun Lin, Weiqian Wang, Senlin Lu, and Shinich Yonemochi: Approval Research for Carcinogen Humic-Like Substances (HULIS) Emitted from Residential Coal Combustion in High Lung Cancer Incidence Areas of China, Processes,9(7),1254(2021).
[2020]
1) W.Wang, W.Zhang, S.Dong, S.Yonemochi, S.Lu, Q.Wang: Characterization, pollution sources, and health risk of ionic and elemental constituents in PM2.5 of Wuhan, Central China, Atmosphere,11(7),760(2020). 2) F.Luo, X.Hu, K.Oh, L.Yan, X.Lu, W.Zhang, T.Yonekura, S.Yonemochi, Y.Isobe:Using profitable chrysanthemums for phytoremediation of Cd-and Zn-contaminated soils in the suburb of Shanghai, Journal of Soils and Sediments,20,4011-4022(2020).
[2019]
1) 米持真一:近年の関東地域における夏季の大気汚染-2018年・埼玉県のO3とPM2.5の特徴-, エアロゾル研究,34(2),65-72(2019).
2) S.Lu, M.S.Win, J.Zeng, C.Yao, M.Zhao, G.Xiu, Y. Lin, T. Xie, Y. Dai, L. Rao, L. Zhang, S.Yonemochi, Q.Wang: A characterization of HULIS-C and the oxidative potential of HULIS and HULIS-Fe(Ⅱ) mixture in PM2.5 during hazy and non-hazy days in Shanghai, Atmospheric Environment, 219, 117056 (2019).
[2018]
1) 米持真一, 大河内博, 廣川諒祐, 小西智也, Ki-Ho Lee, Yung-Joo Kim, Senlin Lu, 富士山頂と埼玉県加須を主としたPM2.5同時観測から評価した2015年夏季の関東地域のPM2.5濃度上昇要因, 大気環境学会誌, 53(4), 144-152(2018).
2) 小西智也, 米持真一, 村田克: 都市大気環境中のPM2.5及びサブミクロン粒子(PM1)の化学組成による発生源推定, 分析化学, 67(6), 363-368(2018).
3) Z.Tan, S.Lu, H.Zhao, X.Kai, P.Jiaxian, M.S.Win, Y.Shang, S.Yonemochi, Q.Wang, Magnetic, geochemical characterization and health risk assessment of road dust in Xuanwei and Fuyuan, China, Environmental Geochemistry and Health, 40(4), 1541-1555(2018).
4) V.L.H.Phung, K.Ueda, S.Kasaoka, X.Seposo, S.Tasmin, S.Yonemochi, A.Phosri, A.Honda, H.Takano, T.Michikawa, H,Nitta, Acute effects of ambient PM2.5 on all-cause and cause-specific emergency ambulance dispatches in Japan, Environmental Resaerch and Public Health, 15(2),307(2018).
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