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Home > 夏期観測2022 > 大気化学 > R16 |
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夏期観測2022 |
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富士山頂および山麓における単一の雲滴採取分析 南齋 勉(静岡理工科大学) |
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一般的に,雨や霧などの湿性沈着物中の化学組成の分析を行う際,採取装置に回収したサンプルに対して行われるため,これらの成分は時間・空間的に平均化され,その詳細情報は失われている。したがって,雲凝結からの成長過程や,雲中への大気汚染物質の沈着過程の解明には一滴ごとの成分分析が重要である。本研究ではゲル薄膜に含まれる溶質と雨中の成分による結晶生成を利用した,単一の雲滴の採取と硫酸塩定量を行う。 |
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プロジェクト詳細 |
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本研究は,単一の雨滴や雲滴の分析による雨雲凝結や成長過程の解明を目的とする。近年,都市域におけるゲリラ豪雨や,線状降水帯による集中豪雨は,各地で大きな被害をもたらすため,大きな問題となっている。急激な雨雲成長には,気象条件の他に,エアロゾルを凝結核とした雲滴形成と成長が大きく関与していると考えられるが,その詳細は完全には明らかになっていない。 また,中国大陸から越境した微小粒子が,日本上空で雲核となり雨水として沈着する【越境大気汚染】は,依然として大きな問題となっている。しかしながら,大気化学モデルに基づく移流解析は,実測データによる裏付けが難しく,時間空間分解能の高い分析が必要となる。 雲滴形成と成長についての研究報告は,これまでにも多くあるが,実環境中の状況を捉えた報告は極めて少ない。我々は,一滴ごとの雲滴や雨滴を採取し,その粒径分布と硫酸塩濃度分布から,雲滴の凝結成長過程を系統化できる手法を開発した。この手法を用いて,富士山体周囲の雲について採取分析を行なう。 |
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期待される成果
富士山麓の太郎坊で雲底の雲滴を採取定量し,経時変化,経日変化を解析することで降水量,風向風速,気温,湿度,気圧などの気象条件や気塊の移流との関係を調べる。また,富士山頂において雲を直接採取することで,地表で採取測定した雨と成分組成や濃度分布などを比較し,雨の中の化学反応を解明するとともに,越境大気汚染と国内排出源の雨成分に対する影響を明らかにする。 |
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社会への還元
近年,地球温暖化に伴う気候変動により,雨は【恵み】としての一面よりも,自然災害をもららす【脅威】としての一面が強くなってきている。雨雲の形成から成長,降水の過程は既に明らかになっているように感じるが,実はその解析の難しさから,未解明の部分は大きい。 本手法によって, 気象学からのみでは明らかにできない新たな知見を,社会に還元できると考えている。
富士山測候所を利用する理由
国内発生源の影響を受けにくい「雲」を直接採取することで越境大気の影響を見る。富士山は標高が高く自由対流圏に位置しており,また独立峰であることから,比較的近傍の汚染の影響を受けずに中国大陸から飛来するPM2.5などの汚染大気の長距離輸送の影響を観測することができると期待している。 太郎坊の位置する標高1400m付近から,申請無しで飛行できる最大高度150mの高さまでドローンを揚げると,ちょうど雲底高度として一般的である1500m付近を採取できることから,富士山頂で雲頂から,太郎坊で雲底から雲粒を採取することが出来るため,比較することで雲内の状態について,新たな知見が得られることが期待される。 |
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今期の新たな取り組み内容
従来,ドローンサンプリングは民間の環境測定会社に委託していたが,委託費用が大きく膨らむこと,委託により機動性が損なわれることが課題としてあった。 今年度は,7月にドローンの民間免許を取得予定であり,自身の手でのドローン採取をめざす。(ドローンの機体不足で,納品次第となる) |
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プロフィール |
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氏名:南齋 勉 所属:静岡理工科大学
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学術論文 |
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1) |
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ドローン飛行に関する法制度とドローンを用いた雲滴サンプリング研究の紹介 南齋 勉 エアロゾル研究 2022, 37, 1-5. |
2) |
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Quantitative Analytical Method for Single Rain Droplets via Crystal Formation in Photocrosslinking Polymer Gel B. Nanzai, Y. Goto, Y. Ishida, M. Igawa, Anal. Sci. 2019, 35, 1263-1267. |
3) |
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Chemical composition of polluted mist droplets M. Igawa, K. Kamijo, B. Nanzai, K. Matsumoto, Atmos. Environ. 2017, 171, 230-236. |
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