富士山測候所を活用する会
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提言 減災 -静岡新聞-

disaster reduction
静岡新聞「防災・減災」に掲載された内容を紹介しています。
鴨川 仁 静岡県立大学特任准教授
かもがわ まさし
東京学芸大学准教授を経て、2019年4月より現職。専門は地球電磁気学、大気電気学、物理教育。認定法人「富士山測候所を活用する会」事務局長も務める。
2020.12.27 「駿河湾に海底観測網を」
 東日本大霙災後に海底へ配備された房総沖から十勝沖までにわたる日本海溝海底地震津波観測網(S-net)は、早期津波予測にいわずとも効果がある。津波を沖合にていち早く検知できれば、有効な避難時間が得られるからだ。今後は、東日本大震災のような津波被害が同地において少なくなるに違いない。
 海底での観測網が早期の津波検知に効果的であっても、データ転送や電源供給のために海底ヘケーブルをひき、海底に計測器を設置するのは高い技術力とかなりのコストを要する。しかし、効果が高いがゆえに配備への大きな投資は意義がある。そのような背景から昨年より、南海トラフ想定震源域西側へのN-netといわれる観測網整備が始まった。ここは、近い将来の大地震が予想されているが、海底での観測がなされてなかった地域である。かねて南海トラフの東側および東南海域では、海洋研究開発機構がDONET、気象庁も御前崎沖に観測網を整備していた。
 その結果、南海、東南海、東海地域という大地震が予期されている場所で、唯一海底の観測網がないのが駿河湾である。東海地域で地震が発生した場合、沿岸への津波到来時間が非常に短いと予想されているので、観測網配備が極めて有効な避難時間をもたらす。もちろん、地震活動の理解においても地上観測だけの地震検知に比べて圧倒的な数の微小地雲を検知できるようになる。
 微小地震の解析で、プレート境界の応力の状態などを推察できるので大地震の中期・長期予測へつながると見られる。さらには桜えび等の漁業環境の保全監視にも併用できるはずだ。気になるのは配備コストだ。駿河湾だけならば、南海・東南海地域に比べてわずかな範囲ですむことから、従来の海底ケーブルによる地震・津波観測の設置コストの1桁下の予算、概算でいうならば10億円程度で可能となろう。以上より東海地域における海底観測網の配備は費用対効果が高く、低コストでできる。
 県をあげて必要性を国にも訴え、場合によっては県の自力で配備を進めていくべきだろう。
2020.08.09 「地下水起因の地震 警戒」
 大地震は海域のプレート境界型、内陸の活断層どちらでも発生する。その発生間隔は大ざっぱにいえばプレート境界型では100年はど、内陸型では千年ほどとされる。この間隔の違いは、地殻に蓄積される応力の時間当たりの量が異なることに起因している。
 プレート境界型は書物に記され、広域にわたる津波堆積物の痕跡などの記録も充実している。そのことから南海から東海地域までの間で幾度となく繰り返された大地震の情報は、684年の白鳳地震以降であるとかなり分かる。一方、内の大地震については、長い発生間隔が故に地表に堆積物がかぶさり、津波もないことから痕跡に気付きにくい。従ってプレート境界型に比べて知識が十分ではないところがある。
 県内は中央構造線と糸魚川静岡構造線という世界的に知られる巨大断層を有している。その二つが接近し、交差する目前の場所が南アルプス周辺であり、リニア中央新幹線のトンネル建設予定だ。現場となる赤石山脈では隆起が年間約4ミリと地殻活動がかなり活発な場所である。過去の大地震の発生履歴は内陸だけに不明燎ではあるが、近隣も含め地震発生の条件は整っているとみられる。ここにトンネル工事となれば、掘削時に発生する地下水の影響で誘発地震が発生してもおかしくはない。
 県内で地下水の変位に伴う誘発地震と言えば、未解明のままとなっているが、JR東海道線の丹那トンネル建設期間中に起きた1930年の北伊豆地震がその可能性を指摘されている。誘発地震は学問的に近年、広く認知されるようになった段階であり、科学的理解については発展途上の段階である。トンネル工事などによる人為的な誘発地震を避けるためには、北伊豆地震のような過去の地震についても最新の研究技術で再調査をし、知見を増やすべきである。
2020.03.22 「教育にこそ減災効果」
 東日本大震災からわすか9年の間でも、日本列島への自然災害は幾度も発生している。災害の予想から発生、発生後の対応を巡り、自分の身を守るためには行政任せで良いのだろうか。
 当然ながら、大規模な防災対策、正確な科学データ収集とそのインノラ保持、災害に対応する利学的判断とその人材確保など、行政でなければできないことは多々ある。しかし、身を守る基本は己の判断である。行政による警報が出ても、自らの判断による行動がなければ効果がない。予測に限界がある自然災害警報についても、警報以上の被害が予想されときに避難行動を自主的に行うか否かは、己に帰す。
 東日本人震災の津波被害を例にとれば、自分がかってないほどの大きな揺れを体感した時、気象庁の津波警報をどう捉えるか。警報の予想津波高が近くの防潮堤の高さ未満であリ、かつ1960年チリ地震による津波被害をその防潮堤で防いだ実績があれは、果たして避難するだろうか。
 地震の縦揺れと横揺れの時間差や揺れの周期などで、震源までの遠近は想像できる。揺れの程度も自己体験から規模を概算し、未曽有の地震で大津波を伴うかもしれないと想像することもできる。津波予測が発展途上段階で限界があると知っていれば、この想像と警報の不適合があったとしても合点がいき、避難を選択するだろう。
 これらの判断力は、学校教育と生涯にわたって更新する知識に大きく依存する。ただ、大学人試に不利とされるなどの理由で高校での地学教育は風前のともしびである。地学の礎となる高校物理まで、履修者がかつての8割から2割まで落ち込んだ。
 しかし、筆者がスーパーサイエンスハイスクール事業で関わる千葉県の私立高は、進学校であるが新たに地学専攻教員を2人採用した。文系生徒は地学必修、理系生徒は他科目で地学の内容を学び、おのずと知識を得やすい環境を作り出した。
 このような事例を参考に、生きる力に大きくつながる教科を、受験等のニーズとも共栄しながら教育に取り戻す道を模索すべきだ。
2019.11.10 「災害時通信の多様性を」
 東日本大震災時で大きな揺れがあった地域で、携帯電話による通話は地震直後から通じなくなったが、メールやチャットなどのインターネット通信ならばやりとりができたという記憶をお持ちの方もいるであろう。インターネットはデータを「パケッ上という小さなサイズに分けて通信することと通信経路の冗長性で、災害に強いネットワークになっているからだ。いまや災害時の情報伝達手段は一方向のテレビから、双方向が可能なスマートフォンに主軸か移りつつある。
 しかし、1強になりつつあるこのインフラも、プラックアウトなど電気の供給がなく、被害領域が広域ともなれば携帯電話回線の基地局とのやリとりすらできなくなる。2018年の北海道胆振東部地震や19年の台風15号被災では、その脆弱性をまざまざと見せつけられた。さらに携帯電話の電波が届きにくい山間部では、災害時にますます無力となる。スマートフォンは衛星によって位置情報も提供できるが、山岳遭難者がなかなか皆無にならないのは、基地局の通信可能距離がせいせい数キロ程度であるからだ。
 一方、1世紀近くにわたって今なお、災害情報の提供で圧倒的な強みがあるAMラジオだが、先日の総務省有識者会議の報告によれば、放送局の経営難から停波もやむなしとなった。災害情報ツールが狭まる傾向は、防災グッズを準備する側からは不安を覚えるに違いない。
 しかし近年、「LPWA」と呼ばれる低データ通信量ではあるが超低消費電力・超長距離通信が可能な技術が産業化してきた。大手電機メーカーでは9月下旬より、従来の技術を飛躍的に向上させて商用サービスを開始した。これは携帯電話の弱点を補完できるだけでなく、科学観測でもデータ伝送を容易にさせることから、自然災害予測精度・減災の向上が見込まれる。
 AMラジオが災害に対して有用でも、時代の変化とともに整理は避けられない。そのために新技術を早い段階から注視し、防災の観点からも早期に利用して機能に慣れておくことが肝要だ。
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